Diary

週末に、うちの相方が教える大学の研究室の学生さん数名と一緒に、アーティストの田中信太郎さんのアトリエにお伺いしました。作品が制作される場と建築的空間のリサーチが目的です。

山の中の小さな集落に建つ田中さんのアトリエは、深い緑にかこまれて周辺となじみつつ独自の存在感をもっていました。杉板の下見張りで仕上げられた緩やかなカーブの壁は、それ自体が彫刻作品のような造形性を持っています。


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この地にアトリエをかまえて40年ほど。最初はRC造(鉄筋コンクリート造)で凸状の平面形状で平屋のアトリエを作ったそうです。その後、凸の形の両サイドのくぼみ部分にご自分の手で増築を重ねて現在の状況に至っています。なのでアトリエの内部空間にRCの外壁の出窓があらわれたり、外光はほぼ屋根の透明部分(トップライトというよりは、透明部分という方がふさわしい)からの光にたよったりと、外と内が混然とした空間となっていて、それが不思議な居心地良さにもなっています。

 

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「アトリエ内は、フレキシブルがモットー」とおっしゃる通り、棚や、テーブル等の家具はコンクリーブロックを積んだ脚に板をわたした造りで一貫していて、棚には材料や道具、作品のマケットが陳列されています。ただのブロックと板ですが、こうやって並ぶと素材美がにじみ出てくるようですね。

 

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田中さんの作品はインスタレーション展示も多く、ご本人も「どのような空間にどのように展示したいかは常にイメージしています」とおっしゃるように、空間に対するイマジネーションと美意識にあふれた方です。もちろん、アトリエは作品制作とそれに付随する生活の場なので、容易に手に入る材料や簡単に組み立てたり移動できたり解体できる機能性を前提にしていますが、それでも研ぎ澄まされた感覚で創りだされた空間の存在感は強固です。

田中さんのアトリエは、創造のエネルギーが時と共に蓄積した、アーティストの生き方そのものが空間となっているような場所でした。

これからも、お元気で創作活動に打ち込んでください!

同行させていただいた、茨城県近代美術館の永松さん、ありがとうございました。