事業所内の保育所の設計
地方都市の郊外にある、医療法人の事業所内託児所です。病院のスタッフの子弟を預かります。
依頼主からの要望は、子どもが育つための豊かな環境づくりであり、隣接する老人保健施設との位置的関係を考慮する、というものでした。敷地周辺は、畑にかこまれた場所で、周囲にゆとりのある敷地であったため日光を遮るものもない状況でした。そこに子どものための豊かな環境をつくるために、「影」をテーマにすることをご提案しました。
アプローチは北側であると同時に老人保健施設がたっていることから、そちらからの眺めも考慮し、北側に全体を印象づけるファサードデザインを考える必要がありました。また、南側からの太陽光を受けて落ちる影を投影するための壁の必要性から、湾曲した壁と屋根が一体となったヴォールトの一部のような形態が導き出されていきました。
湾曲した壁には、影も湾曲してうつり、太陽の位置の変化に伴ってダイナミックにその像を変化させてゆきます。太陽高度が高い春分前から秋分すぎまでは、壁に影はうつりません。太陽高度が低くなる10月末くらいから3月の初旬くらいまでが壁に影がうつる季節です。
この託児所に通う幼児期の数年間の間に、影の動きという時間の移り変わりを建築を通して体験し、一つの原風景となることを願いました。